お腹が空きました。
カタンと紗耶の背後に周り、杉崎が紗耶の細い首筋に顔をうずめる。
「っっ…っ?!?!」
へぇぇぇぇぇ?!と紗耶は肩を飛び上がらせながら突然漂う大人の香りに戸惑った。
そっとあごに添えられた男の人独特のゴツゴツした大きな手に、紗耶は流され、呑み込まれそうになりながらも必死で首を曲げ、杉崎を見ようとする。
「あのっあのあの…っ!杉崎さん…っ!」
もう片方の掌が優しく体を抱き寄せた。
「杉崎さんっ!絶対ごまかしましたよね…?!自分の名前の話題ごまかしましたよね…っ?!」
「……。」
ぐぬぬぬと唸り声をあげ、杉崎は渋々紗耶を抱きしめていた腕を緩める。
どかっと隣の席に腰を降ろした杉崎は肘を机に付き、むすっと紗耶を見つめた。
「別にいーじゃねぇか、名前なんて…。」
「別にいーんだったら教えて下さいよ。仮にも…….、つ?」
付き合って?るんですから?
紗耶は何故か妙に照れてしまい、ごにょごにょ誤魔化して杉崎を覗き込む。
「つ?」
「い!い、から始まりますよね‼確か!」
亜栗が「いっちゃん」と呼んでいる事を思い出し、紗耶は人差し指を立てた。