お腹が空きました。
p。

しばらく壮介と話し合った杉崎は、静かに携帯を下げ、紗耶を見つめる。


「…悪い、ちょっと行ってくる。」

「杉崎さん、ケーキ焼くんですか?」

「いや、仕込みだけだ。姉貴はホントめちゃくちゃしやがる…。」


はぁ、とため息をついて、杉崎は車の鍵を手に取りカチャリと鳴らした。

紗耶は立ち上がった杉崎を不安な目で見つめる。

いつ、帰ってくるのだろう。


聞こえて来た会話では、結構な時間がかかりそうだった。

そんな紗耶をじーっと見つめ、杉崎はボソッと呟いた。



「…お前も行くか?」










「ごめんねー、デート中だった?」


亜栗が紗耶に紅茶を出しながら眉をハの字に傾ける。

「いえ、気にしないで下さいっ。わっ!美味しいですこの紅茶!」

カップを持ったまま驚愕する紗耶に亜栗はクスリと笑った。

「ごめんねー、ゆず君が学祭の準備終わったら手伝ってくれるらしいから、それまで貸してね。」

貸すだなんてそんなそんな、と紗耶は手をぶんぶん振る。


「杉崎さん、良く手伝いにくるんですか?」

「いっちゃん?うん、始めだけね。それだけは父さんからずっと仕込まれて得意だからねあの子。あ、でも相変わらず焼かないけど。」

本当は出来る癖にね、と亜栗はクスクス笑った。

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