お腹が空きました。


「杉崎壱悟。こう書くの。あ、ちなみに苺って発音したらキレるからねあの子。」

亜栗が机に指でなでる文字を紗耶は興味深そうに見つめた。

亜栗はまたペラとアルバムをめくる。

うるうるグズグズ半泣きだった杉崎がアルバムの姿が成長するにつれ、今のキツい攻撃的な瞳に変化していった。

「ここぐらいになるともういっちゃんをからかう子は減ってきたのよねー。怖そうでしょ?チビだけど。」

小5ぐらいの杉崎はカメラを睨むように腕を組んでいる。

その隣でふわふわのボブを揺らし、高校ぐらいの亜栗が笑いかけていた。

その反対側には杉崎にすがりつくように年少ぐらいの桃汰がへばりついている。


「いっちゃんは愛されてんだよねー。いちごって母さんが男の子産まれたら絶対つけるって言ってた名前。すぎさきいちごでしょ?杉崎のきを足して、きいちご。この店の名前のフランボワーズっていうのは日本語で木苺なの。あの子は店の名前にまでなってるのよ。」

まぁ、私と桃汰も愛されてるけどねー。

そうケタケタ笑いながら亜栗はめくり終わったアルバムを閉じた。


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