お腹が空きました。
◆
「どう?はかどってるー?」
美しき鬼嫁が笑顔で厨房に足を入れた。
その後ろから紗耶は遠慮がちに周りをキョロキョロ見渡す。
その声に壮介はバッと顔を上げ、亜栗に泣き言をこぼした。
「亜栗ーっ終わる気がしないよー…っ」
「お前うちんちの厨房の広さ考えて注文受けろよ。」
その隣で杉崎も眉をひそめて言う。
そんなの御構い無しに亜栗は軽快に笑った。
「なにいってんの!この前も大丈夫だったでしょー?ビジネスよビジネス!それにこの仕事受けてた店、材料が事故で届かないんだって。この仕事は元より他の仕事もダメになって大変なの。ライバルでも時には助け合わないとねー。」
さ、頑張って男ども!と笑顔で励まし、亜栗は杉崎にニンマリと笑いかける。
「それにほら、可愛い彼女も見てんだからさっ」
「気が散る。姉貴どっかいけ。」
杉崎は流れ作業で休みなく動きながら実の姉にガンを飛ばした。
カチャ…
「こんばんは…。」