お腹が空きました。





「どう?はかどってるー?」

美しき鬼嫁が笑顔で厨房に足を入れた。

その後ろから紗耶は遠慮がちに周りをキョロキョロ見渡す。

その声に壮介はバッと顔を上げ、亜栗に泣き言をこぼした。

「亜栗ーっ終わる気がしないよー…っ」

「お前うちんちの厨房の広さ考えて注文受けろよ。」

その隣で杉崎も眉をひそめて言う。


そんなの御構い無しに亜栗は軽快に笑った。

「なにいってんの!この前も大丈夫だったでしょー?ビジネスよビジネス!それにこの仕事受けてた店、材料が事故で届かないんだって。この仕事は元より他の仕事もダメになって大変なの。ライバルでも時には助け合わないとねー。」

さ、頑張って男ども!と笑顔で励まし、亜栗は杉崎にニンマリと笑いかける。

「それにほら、可愛い彼女も見てんだからさっ」

「気が散る。姉貴どっかいけ。」


杉崎は流れ作業で休みなく動きながら実の姉にガンを飛ばした。


カチャ…


「こんばんは…。」



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