お腹が空きました。





「…おい、紗耶。」

「………ん、」


「一瞬で良いから起きろ。背中痛くなるぞ。」

ぽんぽんと肩を叩かれ、紗耶は眉を寄らせた。

冷房が効いていて少し寒い。

目の前に屈んでいる風呂上りの杉崎がほかほか暖かく感じて、紗耶は半分寝ぼけたまま暖を取るようにすがり付いた。


「…っ、紗耶…っ」


あ、やっぱりあったかい。

腕を回してまた目を閉じる。

じわりと伝わる熱に紗耶は幸せを感じ、また眠りに落ちて行こうとしていた。


「……はぁ、」


ふわりと宙に体が浮き、ゆらゆらと心地よく揺れる。

なんて気持ち良いんだろうと思っていたら、ふかっと柔らかい場所に着地した。

「……ん…?」

ぼんやりと瞼を上げると、目の前には困ったように微笑む杉崎の顔があって。

「…杉崎さ…、」

「いいよ。眠いんだろ?早く寝ろ。」

ぽんぽんと頭を撫でられると、じんわり幸せなしびれが体をめぐって紗耶はなんだか嬉しくなった。

「…私杉崎さんのフライパンになりたい。」

「は?なんでだよ。」

隣で横になる杉崎は、訳分からんと目を丸くする。


「…なんだか壊れる寸前まで大事にしてくれそうだから。…フライパンがダメなら家具でも良いです。」

「…完全に寝ぼけてるなぁ、お前。」

そうこぼし、杉崎はクスクスと困った顔をして笑った。






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