お腹が空きました。





「…おい、紗耶…」

…ん…、


「…朝だぞ、そろそろ起きろ…」

…朝…?

…朝…朝ごはん…

………お腹空いた…。

「…糖、…分…。」

「…糖?」


杉崎は呆れたように眉を垂らし、黒のタンクトップのままベッドを出た。

カーテンが薄く光り、寝室を優しく照らす。

薄っすら開いていた目をまた閉じて、紗耶は再び眠りの世界に沈んで行こうとしていたその時、コロンと口の中に何かが飛び込んで来た。


「…⁈」

かしっ、とかじれば、酸味のある甘さが口に広がる。

苺だ。

ぱち、と目を開けた紗耶は、目の前でクツクツ笑う杉崎を見て更に驚いた。

「どーだ?目、覚めただろ。」

してやったりの杉崎に、紗耶はぼんやりした頭のまま頷く。

「苺です。」

「苺だな。ほれ、」

杉崎は紗耶に体重をかけないようにまたがり、スプーンで次はミックスベリームースの部分をすくって口の中に運んでやった。

ゆっくり運ばれてくるつるんとした食感のケーキに、紗耶は徐々に覚醒する。

美味しい。

昨日も食べたけど、甘さ控えめなのにベリーの風味がしっかりしていてやっぱり美味しい。

紗耶はあっという間に完食して、幸せそうに笑った。

「美味しいです、親鳥さん。」

「親鳥?いや、俺はどっちかっていうと、畜産のおっさんだな。」

「?」

「少しは腹ごしらえになったか?」

「え?はい。胃の収縮はおさまりました。」

へらっと笑う紗耶に、杉崎は悪い顔をしてニヤリと笑った。



「じゃあ、そろそろ食べ頃だな。」




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