お腹が空きました。
◆
「…おい、紗耶…」
…ん…、
「…朝だぞ、そろそろ起きろ…」
…朝…?
…朝…朝ごはん…
………お腹空いた…。
「…糖、…分…。」
「…糖?」
杉崎は呆れたように眉を垂らし、黒のタンクトップのままベッドを出た。
カーテンが薄く光り、寝室を優しく照らす。
薄っすら開いていた目をまた閉じて、紗耶は再び眠りの世界に沈んで行こうとしていたその時、コロンと口の中に何かが飛び込んで来た。
「…⁈」
かしっ、とかじれば、酸味のある甘さが口に広がる。
苺だ。
ぱち、と目を開けた紗耶は、目の前でクツクツ笑う杉崎を見て更に驚いた。
「どーだ?目、覚めただろ。」
してやったりの杉崎に、紗耶はぼんやりした頭のまま頷く。
「苺です。」
「苺だな。ほれ、」
杉崎は紗耶に体重をかけないようにまたがり、スプーンで次はミックスベリームースの部分をすくって口の中に運んでやった。
ゆっくり運ばれてくるつるんとした食感のケーキに、紗耶は徐々に覚醒する。
美味しい。
昨日も食べたけど、甘さ控えめなのにベリーの風味がしっかりしていてやっぱり美味しい。
紗耶はあっという間に完食して、幸せそうに笑った。
「美味しいです、親鳥さん。」
「親鳥?いや、俺はどっちかっていうと、畜産のおっさんだな。」
「?」
「少しは腹ごしらえになったか?」
「え?はい。胃の収縮はおさまりました。」
へらっと笑う紗耶に、杉崎は悪い顔をしてニヤリと笑った。
「じゃあ、そろそろ食べ頃だな。」