お腹が空きました。
「んで、ある日、もう駄目だと思った。…ごめん、好きになっちゃったんだ。優ちゃんの事。でも、紗耶の事も大事だった。これは、本当。紗耶とは、大事な思い出がある。愛情もある。でも、優ちゃんも好きになっちゃったんだ。……ごめん、最低な事言ってるって、分かってる。」
「うーん、まぁ、確かに…ね。」
「うん…二人とも好きだとか、最低だ、俺…。」
カランとマドラーを回して、紗耶はハハッと笑った。
「はぁぁぁキツいなぁ。この間まで彼氏だった人と他の人の話聞くのは。でも、ズルズル両方と付き合うより、まだマシか…。」
「ごめん…、」
「まぁ、どっちかって思った時、私じゃなくて、その子を選んだんだよね、良介は。」
「ごめん…」
「あははー…」
「…。」
謝罪しかしない良介に紗耶は妙に寂しくなって、財布からドリンク代を取り出した。
「…でも!本当に紗耶も好きだった!」
…だった、ね。
紗耶は眉を八の字にしながら笑った。
「…うん、私も。好きだったよ。」
「…。」
「大事にしてあげてね、その子の事。大切な事は嘘ついたらだめなんだからね?」
「うん、分かった。」
「じゃ、バイバイ、」
「バイバイ、紗耶。ありがとう。」
紗耶はカバンを持ち、ふらりとファミレスから立ち去った。