お腹が空きました。


前を向いて膝に手をつきながら、紗耶はボタボタボタと涙を流していた。


視界にあるはずのテーブルが涙でただの茶色いなにかにしか見えない。


中途半端に、適当に、すぐバレるような嘘をつかれた事が悔しかった。

最後にそんな軽い扱いを受けたのがショックだった。


向こうからしたらただ穏便に別れたかっただけかもしれないが、そんなの、ただ自分可愛いだけじゃないか。


悔しい。



…悔しい。



声も出さず、鼻もすすらず、ただ静かにボタボタ泣く紗耶を見つめ、目の前の友人が困ったように笑いながら一息、ふぅと溜め息をついた。


そしてよっこらせと立ち上がり、かたわらにあった自分の飲み水を掴んで微笑みながら隣の良介の頭にざぁー。と流す。


他の客も、良介も、その女の子も、そして紗耶も、目を点にした。


「…何すんだよっ!」


数秒後に状況を把握した良介は勢いよく立ち上がり、友人を睨む。


友人はその緊迫した空気にそぐわない穏やかな表情をしながら、静かに言った。






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