お腹が空きました。


「留学するから?遠距離恋愛に耐えられそうにないから別れたい?つまんない小道具使ってんじゃねぇよ。しょうもない男だなホント。行こう紗耶。」

「え、…うん。」


静まり返る店内で紗耶はぎこちなく腰を上げた。


椅子の音がやたらひびく。


「さ、紗耶…っ。」


その時の良介のなんともいえない顔が目にかすった。



それがあまりにも情けなくて、


滑稽で。


「(…あれ、良介ってあんな顔してたっけ。)」


もっと格好良かったと思っていたけれど…。


引っ込んだ涙を拭いながら、紗耶はそんな良介より数倍格好良かった友人の後に続く。


スマートに会計を済ませた友人に手招きされながら店を出た。



「…ほれ、鼻もかむ。」



どこからともなく突き出されたティッシュを受け取り、紗耶はチーンと音を出して鼻をかんだ。


「…落ち着いた?」


「…惚れちゃいそうですミドリちゃん。」


「やめれ。」



それからイライラをぶっ飛ばすように夜の街で学生みたいに二人で遊んだ。


久しぶりにプリクラも撮ったし、ビリヤードにも行った。


途中でナンパもされたけど、二人で笑いながら走って逃げた。


なんだか楽しくて仕方がなかった。





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