幸せまでの距離


その日の夜。

月がぼんやりにじむ曇った空。

かすむ星と乾いた空気。


メイは夕食を断り、スーツ姿のまま自室にこもっていた。

リクと別れて、ミズキ·マナのペアと帰宅してからずっと……。

部屋の明かりもつけず、ベッドに寝そべったり部屋をうろつき……を繰り返していた。

そんな無意味な行動の繰り返しにも飽きて窓を開け放つと、どこからか、か弱げな鳴き声が小さく聞こえてくる。

「猫……?」

夜闇に包まれた眼下。

ブロック塀の角に集まっているミルクのように白い毛のかたまり。

部屋の明かりを消していたせいで目が暗さに慣れていたので、暗い景色の中でも、メイがその集合体を猫の親子だと気付くのにそう時間はかからなかった。

母猫が子供達に母乳を飲ませている。

“私、目だけはいいんだよね。

勉強嫌いだからか?”

遠目にも分かる、子猫の様子。

星崎家の住宅を囲むブロック塀の一角で、生まれたばかりと思われる小さな猫が親猫に甘えている。

「かわいいじゃん……」

動物になんて興味ないけどね、と冷めた口調で付け足してから、メイは窓枠にもたれて猫のかたまりを見下ろした。

ある子猫は一生懸命母猫の乳を飲み、

また別の子猫は母親のお腹に頭をすりつけている。

“私も昔は、あんな風に、母親に甘えてたのかな?”

メイには、幼少期に母親に甘えた記憶がほとんどない。

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