幸せまでの距離

いま自分が子猫を可愛いと思ったように、かつてメイの母親だった翔子も、メイを可愛いと感じる瞬間があったのだろうか。

翔子の元にいた時はそんなこと考えないようにしていたのに、ここへ来てしみじみと考えてしまう自分に、メイは呆れた。

「んなもん、考えたって分かるわけねーじゃん」

以前のように荒れた口ぶりになる。

「あんな女、どーなったっていいだろ……」

子猫達の和やかな姿は、リクと別れてからささくれ立ったままのメイの心をわずかながらに癒してくれる。

時々「ニャア」と柔らかい声を上げて、じゃれあう子猫同士。

毛並みも似ているし、みんな生まれた瞬間から隣にいた兄弟なのだろう。

「……あんたらは、ずっと親元離れんじゃねーぞ」

言葉使いとは反対に優しい表情で猫達に声をかけると、部屋の明かりがつくのと同時に、ミズキの声が響いた。

「メイ、ご飯。ちょっとだけでも食べな?」

「ミズキ、いたの!?」

猫に向けたセリフをミズキに聞かれていたかもしれないと思うと急に恥ずかしくなり、メイはやや怒ったように返した。

だが、ミズキはそれに気付いていないフリをし、

「ごめんね。ノックはしたんだけど返事がないから、寝てるのかと思ってた」

「なら、わざわざ入ってこなくていいじゃん」

まだ恥ずかしさが消えずメイの言い方はぶっきらぼうになるが、その後のミズキの心遣いを知って、ツンケンとした自分の言動を少し後悔した。

「メイの様子、いつもと違うから気になって……。

お母さんも心配してたし、マナも帰る時までメイのこと気にしてたよ。

夜ご飯食べてもらいたいのはホントだけど、それは口実」

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