幸せまでの距離

「うん。メイの言う通りだね」

ミズキは、メイがこの家の雰囲気になじんでくれていると感じ、じんわり感動していた。

ここへ来たばかりの頃より、メイの目つきは柔らかくなっている。

食事を続けるメイの横に座り、ミズキは言った。

「でもね、メイ。

それは、半分合ってて、半分は違うと思うんだ。

傷を負って痛みを知ることで、人は本当の意味で優しくなれる。

私は、そう感じてる」

「痛みで、優しく……?」

「うん」

うなずくミズキ。

メイはいったん箸を置き、落ち着いた口調で、

「でもさ、傷を受けたからって優しくなれるとは限らないよ。

少なくとも、私はそうだった。

ぞんざいに扱われ続けると、プラス思考でいるのがバカバカしくなって、夢とか希望って言葉がうっとうしくなるんだ。

どいつもこいつも気休めばかり。現実逃避じゃん、ってさ」

一方的に傷を追うばかりでは、心は疲れ、荒れてしまう。

なぜ、自分ばかりがこんな目に?

気付いた時には、自分で修正できないほど、自分を傷つけた他者への恨み·世の中への不平不満で荒れる人間もいる。

自分自身の経験から、メイはそう考えていた。

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