幸せまでの距離
アカネの財布はブランド物でもなけ れば、新品でもない。

むしろ古いデザインだし、使い古さ れていた。

「お金より財布が大事なの?」

ショウマが目を丸くして尋ねると、 アカネは小さくうなずき、

「うん。中学の卒業祝いに、お父さ んが買ってくれたものだから」

「そっか。そんな大事な財布なら、 失くしたら大変だもんね。

でも、お金ないと困らない? あ さってまで家帰れないし」

大切そうに財布を手に包むアカネを 微笑ましげに見て、リクは訊(き) いた。

アカネの横にいた友人女子も、

「私が貸してあげたいけど、自分の 分しかなくて……」

と、恥ずかしそうにうつむく。

リクは迷わず自分の財布に手を伸ば し、1万円札をアカネに差し出し た。

「これで足りる?

余分なお金、このくらいしかなく て。

少なくて悪いけど」

アカネはみるみる頬を紅潮させ、

「そんな、充分足りるよっ。

合宿終わったら絶対返すから、メア ド聞いていい?」

「別に返さなくていいよ」

昔からメイにお金を渡し慣れている リクにとって、困っている他人に金 品を分けるのは当然のことだった。

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