幸せまでの距離
“メイにとって、星崎家の人と家族 になったことは良いことだったね”

メグルはそんな気持ちを胸に、最近 の出来事を話した。

「社員になってみて初めて知ったん だけどさ。社員はバイトの延長と 思って甘く見てたら全然違ったよ ~。

お客さんにお礼言われるとやり甲斐 感じるし、やる気になるんだけど、 しょっちゅう辞めたくなる」

社会人という立場は、思った以上に つらい。

高校時代にアルバイトをしていた居 酒屋とはいえ、アルバイトとは違 う。

よりよい店にするため、月に数回、 本社か支店で行われる研修や会議に も出席しなければならないし、アル バイトの教育も社員であるメグルの 役割だ。

「もう、クッタクタ。

帰ったら寝るだけで、全然遊べない し……」

メグルのグチは続く。

大きなため息と共に吐き出したの は、失恋話だった。

「そんな人いたんだ。初耳だし」

メイがやや驚きの反応を示すと、メ グルはヘラッと笑い、

「うん。メイにもちゃんと紹介した かったんだけど、たった二週間でフ ラれたからね~」

と、メグルはあっけらかんと言う。

「はあ……。こんなはずじゃなかっ たんだけどなぁ……」

わざと大きく息を吐くと、メグルは 無理矢理口角を上げる。

メイから見たら、涙を我慢している ようにも見えた。
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