幸せまでの距離

以前の……。もっとも荒れていた 中学時代のメイに戻りかけてい る。

彼女の口調から反射的にそう感じ たリクは、高ぶる感情にまかせて 言葉を返した。

「全部だよ!

メイといると、楽しいし幸せだし 嬉しいよ!

得とか損とか、そんなの考えたこ とない!!」

興奮のあまり顔を紅潮させている リクを、ショウマは不安げに見つ めている。

「気に入らないとこがあるなら全 部言って!

直す努力するから!

このままメイと離れたくない!」

メイに嫌われたくない。

これ以上避けられたくない。

もっと近付きたい。

その一心で、リクは訴えた。

しかし、その気持ちはメイに届く ことなく、はねのけられてしま う。

『……無理なんだよ』という言葉 と共に、メイは冷めたため息をつ いた。

『あんたに関わるとロクなことが ない。

あんたは幸せかもしれないけど、 私は全然幸せじゃない。

あんたといると自分が嫌になるだ け。

……しょせん無理なんだよ。他人 同士がわかりあうなんて。

もう二度とあんたの声は聞きたく ない。顔も見たくない』

「……そんな……」

『…………』

タイミングを見計らったように、 そこで充電が切れてしまった。

リクの手からはケータイが滑り落 ち地面に打ち付けられ、むなしい 音を立てた。

真っ黒になったケータイ画面は、 リクの心そのもの。

メイの心が見えない――。
< 242 / 777 >

この作品をシェア

pagetop