幸せまでの距離


翌朝。

カーテンをした窓越しに小鳥の鳴 き声が聞こえ、リクは目を覚まし た。

見知らぬ部屋の天井。

柔らかいソファーベッドは、自分 の部屋のものとは違う。

遮光(しゃこう)カーテンのおか げで、室内は薄暗かった。

“……そっか。ゆうべ、ショウマ んちに泊めてもらったんだっけ”

昨夜、電話でメイに別れを告げら れ、砂浜で泣きじゃくった後、リ クは自宅には帰らず、ショウマに 誘われるがまま彼のアパートに泊 まることにしたのだった。

ショウマは遠方からN大学に来て いる、一人暮らしの身。

入学式の日、リクが酔い潰れた ショウマをここへ送ってきた時よ り、この部屋は部屋として機能し ていた。

段ボールに入っていたのだろう雑 貨や生活用品は綺麗に整頓され、 家具の使い方からも生活感が漂っ ている。

“久しぶりに外泊したな”

リクが室内を見回すと、窓際の ベッドには気持ち良さそうに寝て いるショウマの姿があった。

「こんなこともあると思って、こ れ持ってきてよかった」

そう言ったショウマは、ゆうべ、 ベッドとしても使えるタイプのソ ファーにリクを座らせた。

泣きはらした顔で何も言わないリ クに、ショウマは手作りの飲み物 を差し出す。

寝起きの今はそれがショウマの気 遣いとわかるが、最初それを口に した時のリクは、

「ジュースかと思ったけど、こ れ、酒じゃん!」

としか言えなかった。

「飲み過ぎは良くないけど、少量 なら問題ないって。よく眠れるよ」

ショウマはそう言い、泣き疲れた リクにフルーツ系のカクテルを飲 ませた。

「睡眠薬でもあるまいし」

リクは最初半信半疑だったし、人 生初の飲酒に戸惑いを隠せなかっ たが、睡眠を取った後の今は、そ んなショウマの心遣いを嬉しく思 えた。

メイに振られた痛みのあまり、何 をしようが絶対に眠れるわけがな いと思っていたのに、少しのアル コールを飲んだだけで、驚くほど グッスリ眠れた。
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