幸せまでの距離
「……んなこと……。ないよ」
“ミズキちゃん、俺のこと買いか ぶりすぎだよ”
メグルやミズキから届いたメー ル。
どの内容にも返信する言葉が思い つかず、リクはケータイを閉じ た。
ソファーベッドの上で仰向けの体 勢をうつぶせに変え、強く目をつ ぶる。
昨夜出し切ったはずの涙が、また 溢れてきた。
枕を抱きしめて顔に押し当てる。
とめどなく溢れる涙の粒は、メイ との思い出の数よりはるかに多 かった。
「俺だって、メイを助けたい よ……!!
でも、もう無理なんだ……」
無力な自分への怒り。
どうすることも出来ないまま振ら れてしまった情けなさ。
いま、はっきりと後悔しているの は、あの時アカネの元へ駆け付け たこと。
それがメイの気持ちを離れていか せる原因にもなりえるのだと、な ぜ気付けなかったのだろう……。
優しさとは、多くの人に向ければ 向けるほど良いとされるものなの かもしれない。
ただ、それは、他人から良く評価 されるだけのものであって、自分 自身の幸せとはまた別物である。
リクは、他人に良い評価をされた くてアカネに親切にしたわけでは ない。
「優しい人だね」と、周囲に気に 入られたかったわけでもない。
ほめ言葉など、いらない。
ただ、目の前で困っている人に、 昔から関わってきたメイの面影を 無意識のうちに重ねていたに過ぎ ないのだ。
“いまさら気付いても、もう、遅 すぎるよな……”
メイ以外の女子と関わることが少 なかったリクにとって、アカネと の関係をどう処理していくかが、 今後の大きな課題になりそうだ。