幸せまでの距離
ミズキの弟・リョウが、メイの初 恋の人であることも話した。
リクは意識して簡潔に話したの で、言葉にしてみると、話し終え るのに15分もかからなかった。
だが、ショウマの感覚ではそれ以 上に長い話に感じられた。
テレビで長編ドキュメンタリーを 見た後のように、全身が感受性に なってしまったかのごとく、五感 という五感全てが痛々しい刺激に 満ちている。
リクが話すメイの過去は、重く暗 いものだった。
話し終える頃、リクの頼んだカ フェラテは冷め切っていた。
すべてを聞いた後、衝撃のあま り、ショウマはただただ目の前に 置かれたオレンジジュース入りの グラスのフチに視線を落としてい た。
「驚いた……?」
固まったまま動かないショウマに 戸惑いを隠せず、リクは彼の顔色 をうかがった。
もしかして、自分の話し方がまず かっただろうか。
もう少し省略した方が良かったの だろうか。
話してはいけない部分まで、話し てしまったのだろうか……。
数分間の沈黙――。
二人の間には、それまで耳に入っ てこなかった周囲の音が割り込ん できた。
店に入ってきた客の足音や、話し 声。
表通りを滑る自転車のベル音。
街路樹の葉擦れ。