幸せまでの距離

「ウチの家族は、端(はた)から 見たら平和で恵まれた一家だと思 う。

両親がいて、妹もいる。

金銭的には何の不自由もないし、 家族は皆健康」

ショウマは自分の家族について話 した。

「ウチの母親は若い時に最初の結 婚をしてるんだけど……」

さっきショウマがそうしてくれた ように、リクもただ黙って相槌 (あいづち)を打った。

ショウマの母親は若くして最初の 結婚をし子供(ショウマ)を授 かったが、ショウマが2歳の時に 離婚した。

離婚の原因は明かされていない が、以来ショウマは、実の父親と 会うことが許されなかった。

なぜかというと、翌年、母親が違 う男と結婚したからだ。

ショウマは物憂げな顔で頬杖をつ き、

「今でも時々、本当の父に会いた いと思うけど、今さらもう無理だ ろうし、諦めてる……。

本当の父は、きっと俺のこと可愛 がってくれてたんだろうけど、俺 もまだ2歳だったから父の記憶な んて全くないし、母親も今の旦那 に遠慮して昔の写真は捨てたか ら、本当の父の顔は知らない」

「……そうだったんだ」

ショウマにつられるように、リク も窓の外を見た。

歩道に、アタッシュケースを手に した背広姿の中年男性が歩いてい る。

この近辺にある商社のサラリーマ ンだろう。
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