幸せまでの距離
リクは、ショウマを見てこう思っ た。
道行く大人の男性に、実の父親の 影を重ねているのだろうか、 と……。
ショウマの母親は、再婚後新しい 命を宿した。
その子はショウマの異父兄弟に当たる、4つ歳下の妹。
「いつの頃からか忘れたけど、昔 から父とは気が合わないと思って たんだ。
血がつながってないから当然かも しれないけど」
ショウマはわざとげんなりした顔 を作って、明るく話した。
「父と俺では考え方も違い過ぎる し、家の中での態度とかも、ね。
男尊女卑も甚(はなは)だしい人 でさ。
家族にそれをごり押しするんだ よ」
ショウマの父は、ショウマの母よ りも20歳近く歳上の男性だ。
田舎暮らしが長かった上、昭和時 代の考えを持ち続けている人物で もある。
それゆえに、ショウマの実家で は、一家の大黒柱(だいこくばし ら)が一番先に入浴するものだと 決められていた。
「大黒柱って、何?」
リクが尋ねると、ショウマはせせ ら笑い、
「はははっ。今の時代、そんな言 葉聞かないよな。おかしいだろ?
家族を養う人のことを、昔はそう 呼んでたんだって」
昭和の頃は、家族の扶養義務を持 つもの……一般的には父親の役目 を持った男性が大黒柱と呼ばれて いた。
「へえ……。そうだったんだ」
リクは自分の父親を思い浮かべ、 それに大黒柱のイメージを重ねて みたが、父を大黒柱と例えること に違和感を覚えた。