幸せまでの距離

ショウマの家庭では、大黒柱…… すなわち父親が、全ての主導権を にぎっていた。

父が仕事で夜遅くの帰宅になって も、家族は先に飯を食べてはなら ないのだ。

食事は、大黒柱の元で全員そろっ てするもの。

だから、父が帰宅するまでは、誰 も食事に手をつけてはいけない。

子供は、親の言うことに素直に従 うのが当たり前。

世間的に見て間違っていようと も、ショウマの家庭では、父親の 意見が絶対なのである。

父親に反対意見を述べたり、反発 するなんてもってのほか。

リクはその話を聞いて、

「そんなぁ……。

こんなこと言ったら悪いけど、 ショウマのお父さんって、なんだ か子供っぽくて王様みたいな人だ ね」

と、息をのんだ。

大の大人が、職権ならぬ親権を乱 用してワガママに振る舞っている ようにしか見えない。

ショウマは飽きれた顔をし、

「それはまだ、マシな方。

食事や風呂の時間合わせたりとか は、我慢できるレベル。

ただ、感情的に振る舞われると、 さすがにイライラしたわ」

ショウマの父親は外面(そとづ ら)が良く世渡り上手で、自分で 会社経営をしている、やり手実業 家でもあった。

稼ぎが良くて、頼りになる夫。

他人からはそう見られていたよう だが、家の中では自分の気分で家 族を振り回すような人間だった。

自分が仕事で疲れていると、子供 達にもテレビ鑑賞や雑誌を見るの を許さなかったりした。

逆に自分の機嫌が良いと、家族の 予定を無視して突然家族旅行に行 くと言いだしたり、極めて自己中 心的な言動をしていた。
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