幸せまでの距離

ショウマが父に反発した夜。

両親の寝室で、父は母に怒鳴っ た。

『違う男との間に出来た子供を育ててやって んのによぉ!

お前は、ずっと家に居て何をして るんだ!?

お前の育て方が悪いから、ショウ マはあんなナマイキなガキに育っ たんだろうが!! ああ!?』

『ごめんなさい……。

あの子にはちゃんと言い聞かせま すから……』

怒鳴り声は子供の寝室にまで響い ていた。

気分を害した父が怒鳴り散らすと いう光景はもう日常と化していた ので、放っておいて寝てしまおう とも思ったが、その日はなぜか胸 騒ぎがして眠れなかったので、 ショウマは両親の寝室に様子を見 に行くことにした。

音を立てないよう、引き戸をわず かに開き、中の様子をうかがう と、母は泣きながら父にすがって いた。

『許して下さい!

怒らないで下さい!

私にはあなたしかいないんで す……。

ショウマには、二度と口答えさせ ませんから!』

小学生の頃、ショウマはたまたま 両親のそういった会話を聞いてし まい、衝撃を受けた。

なぜ、母はあんなにも父にすがる のだろう?

あんな風に虐(しいた)げられて まですりよる必要がある相手なの だろうか?

ショウマは母親の気持ちが分から ず疑問ばかり湧いたが、ああまで して父にすがる母を見て悲しく なってしまった。

自分のせいで、唯一の肉親が苦し んでいる。

自分のせいで、母親に涙を流させ てしまっている。

それ以来、ショウマは父に反発す るのをやめた。
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