幸せまでの距離

ショウマは普段通りの軽い口調 で、

「かなりショックだったよ。

妹だけは、俺と同じ感覚で居てく れてると思ってたのにさ。

裏切られたような気分になった し」

ショウマの母は、夫にショウマを 育ててもらっているという恩や引 け目から、夫に逆らうようなこと は決してしない。

『お父さんの言うことに逆らっ ちゃダメよ』と、必死になってショウマ に言い聞かせていた。

「俺も、好き好んで養われてやっ てるわけじゃない!とか、あんな 家族いらないとか、どれだけ父を 憎んだか分からないけど、血のつ ながりがないのに育ててもらって いる以上、文句も言えないかなっ て。

まあ、そう思えるようになったの はネロのおかげなんだけどさ」

ショウマは元交際相手の名前を口 にした。

精神的にもっとも荒れていた高校 時代、ショウマに愛情を注いでく れたのはネロただ一人だった。

個人の部屋は与えられているが、 心のよりどころなんて、この家に はない。

そんなショウマの渇き切った心 を、たくさんの水で潤してくれた のが彼だった。

ネロとは別れてしまったが、ショ ウマは『父に負けたくない!』と 自分を叩き起こして、N大学を受 験した。

遠方の大学を選んだのは、実家を 出て自由に暮らすため。

世の中を変えたいという気持ちも 確かに存在している。

法学部に入ったのは、頭脳、性 格、立ち居振る舞い、全てにおい て父親に勝ちたいと思ったから だ。
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