幸せまでの距離

ショウマは気まずそうな顔で言っ た。

「まあ、なんて言うんだろ。

割り切ってるっちゃ、割り切って るんだよ。

昔に比べたら自分の環境を客観視 できるようにもなって、父のいる 日常を悲観的に考えることも減っ た。

父は父、俺は俺なんだ、ってい う、アイデンティティーも確立で きるようになった。

……でも、心の底では今でも愛に 飢(う)えてんのかもしれない。

他人の親子が仲良さげにしてた り、親の愛に恵まれてそうな顔し て歩いてる人を見ると、嫉妬とい うか、うらやましくなるという か……。

今年で二十歳になるっていうの に、情けないなって自分でも思う けど。

世間的には大人の年齢かもしれな いけど、中身は子供なまま。

本物の父親に会いたいって願っ ちゃうのも、そのせいかもね。

自分は愛されるべき子供だ、

祝福されて生まれてきたんだ、っ て、

何かしら証明が欲しいんだよな」

「ショウマ……」

「今ではだいぶ少なくなったけ ど、昔はよく、自分の存在価値が 分からなくなってたし。

血のつながりがある母には必要と されるどころか邪魔者扱いされ。

半分血を分けた妹ですら、あんな 両親の味方。

俺はここに居ちゃいけない人間。

本来、生まれてくる予定のなかっ た人間なんじゃないかって疑った よ」

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