幸せまでの距離

強気な言い方だが、メイの唇は細 かく震えていた。

「ウワサがこわいから、何人もの 男と寝るわけ?

店のイメージを守るために、知ら ない人間とのセックスを繰り返す わけ?

メグルはそれが嫌なんだろ?

カナデの店に連れてかれた時、こ わかったんだろ!?

だったらやるなよ!!

ウワサなんて、体を傷つけられる のに比べたらささいなもんだろ?

だいたい、カナデがそれでメグル を見逃す保障もない。

今度は風俗で働いてることを引き 合いに出して、同じように脅して くるだろうね」

「そんな……」

「恨み深いヤツなら、そのくらい 先を考えてると思うよ。

仮にメグルがカナデの指示に従い 店で働いて、あいつの匿名電話を 防げたとしても……。

そうやって性をないがしろにして たら、いつか男の存在を真っ正面 から受け入れられなくなるよ。

私みたいに偏見の目でしか見れな くなるよ。

そうなったら、簡単には元の自分 に戻れない。

努力で変えられるわけじゃないん だ。

メグルも本気でそうなりたいわ け?」

「…………それは……」

メイがそこまで思いつめていたな んて……。

彼女の言葉を助言として受け入れ る以前に、メグルは同じ女性とし て胸が苦しくなった。

メイの受けた性犯罪のトラウマ は、当人にしか分からないほど根 が深く、深刻なもの。

メイの苦しみを想像するだけで、 息苦しいほど心が痛くなる。
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