幸せまでの距離

仕事に行くと言ったメグルと別 れ、メイとミズキは駅に向かっ た。

ミズキの大学とメイの通う専門学 校の最寄駅は、同じである。

朝の通勤ラッシュを少し過ぎた ホーム。

電車を待ちながら、メイはミズキ に尋ねた。

「まさか、あんな時間に待ってる と思わなかった。

今から行って、大学の授業間に合 うの?」

メイは完全に遅刻である。

ミズキはわざと頬を膨らませ、

「誰かさんのせいで、遅刻だよ ~」

と、怒ったフリをした。

「なんてね。冗談!」

「…………」

「授業より、メイの方が大事だも ん」

ミズキは迷いのない口調と晴れや かな横顔でそう言い切った。

照れゆえに、メイは一瞬言葉を失 う。

「夢を叶えるために今の大学に 行ってるのに?」

「家族がいてこその夢だよ」

ミズキは言うと、メイの頭を優し くなでた。

「もう、黙っていなくならないで ね」

「……うん」

「よし。いい子だね。

じゃあ、約束の指切りっ」

ミズキはふざけた口調で小指を差 し出す。

二人が指切りを終えると、目的の 電車が到着した。

子供時代に戻ったようでくすぐっ たくもあったが、メイにとっては 人生の中で一番幸せな指切りだっ た。
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