幸せまでの距離

電車の中は意外に空いていた。

やはり社会人の姿は少なく、ミズ キやメイのような学生と思われる 男女がポツリポツリと乗車してい るだけだった。

二人は適当な座席に腰を下ろす。

メイは、自分が家を出ていた間、 ひそかに気にしていたことを訊い た。

「あの白猫、昨日は来てた?」

星崎家の庭に時々入り込んでいる 白猫の親子。

ミズキも、メイが白猫を気にかけ ていると知っていた。

「昨日は多分、来てないよ」

「そう……」

白猫が来ると、メイは必ず気にか け、彼らの様子を見に行ってい た。

昨夜来ていなかったのなら、今夜 待ってみようとメイは思った。

「あの猫さ……」

ウチで飼いたいと言いかけ、メイ は口をつぐむ。

自分が養子になったことで、星崎 家の金銭的な負担が大きくなった のは、言われずとも分かる。

ペットを欲しがるなんて贅沢な気 持ちは許されないと思った。

「あの白猫が、どうかしたの?」

「ううん、何でもない」

「ふーん?」

メイは無表情でごまかした。
< 307 / 777 >

この作品をシェア

pagetop