幸せまでの距離

「メイちゃんって、タバコ吸わな いよね?

今まで吸ってるとこ見たことない けど」

カナデは場をつなぐべく、明るい 声で適当に言葉を並べた。

「最近は全然だけど、中学の頃か ら吸ってたよ。

今のアンタみたいに、イライラを ごまかすために」

「イライラなんてしてないよぉ。

そんな風に見えちゃってた?」

カナデは愛想笑いでごまかそうと したが、メイには通じなかった。

「……その様子だと、トウマって ヤツとはまだ決着ついてないみた いだね」

メイは煙を吐き出し、核心を突 く。

カナデは勢い良く口からタバコを 離し、恐る恐るメイの横顔を凝視 した。

その先端からこぼれた灰が、音も 無く床に落ちる。

カナデの視線の奥にあるものを横 から感じつつ、メイは言った。

「まどろっこしいの嫌いだから単 刀直入に言う。

メグルに変な交換条件持ち掛ける の、やめてくれない?」

「変な、って、何のこと?」

カナデはぶりっ子顔負けの甘い声 でとぼけた。

昨夜メグルと居た時のカナデとは 思えないくらい、言動や雰囲気が 違い過ぎる。

メイはため息を吐き、

「そうくると思った。

なら私が、アンタが影でしてるこ とココの皆に言い触らすって言っ ても、同じ態度が取れる?」

カナデが風俗店で働いているこ と。

本当は言い触らす気など全くな かったが、メイも後に引かなかっ た。

こうでも言わないとカナデは本性 を現さないだろう、と、思え て……。
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