幸せまでの距離

「アンタ、メグルにこう言ったら しいじゃん。

時に罵られても、知らない男に体 を捧げて金をもらってきたって。

トウマってヤツは、それを知って んの?」

「知らないと思う。

言ってないから」

メイに謝られたことで、心の壁が 取れたのだろう。

カナデは素直な思いを口にした。

「半分は意地かもしれない。

今までトウマに、たくさんの金を 注ぎ込んだから、今さら引けな いって感じで。

トウマの夢を応援するのは楽し かったよ。

難解なゲームを一つ一つクリアし ていく感覚で……。

トウマに出会うまで、私は毎日が 退屈で仕方なかったもん」

「毎日が退屈、ね。

一度は言ってみたいよ、そんなセ リフ」

カナデがうらやましいと、メイは 素直に思った。

自分の人生には、日常が退屈だと 言える平穏さが欠如していたのだ と、改めて思い知らされる。

自分とカナデは、違う人間であ る。

メイはそう強く認識して、こう尋 ねた。

「そんなの、もうやめちゃえば?

いい加減目が覚めたでしょ?」

トウマの存在にさえこだわらなけ れば、カナデならいくらでも女と しての幸せを手に入れられると 思ったのだ。

カナデは意外そうに目を見開き、 悲しげに笑う。

「メイちゃんにそんなこと言われ るとはね……」
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