幸せまでの距離

カナデはだいぶ落ち着いたよう だ。

「……わかってる。

もう、トウマは昔のトウマじゃな いってこと……」

そうつぶやくカナデの目には、涙 が浮かんでいた。

「昔は真剣に夢を追ってた。

でも、私が甘やかしたのがダメ だったんだと思う。

トウマは昔ほど演技に力を入れな くなってた。

昔なら練習をしてた時間帯に、飲 み歩くようになった。

劇団の先輩と飲み屋に行ったり、 ゲーセンに行ったり、目の前の楽 しみだけを求めるようになっ て……。

今のトウマは、叶わない夢を前 に、現実逃避してる」

「そうだろうね……」

「本当なら、今すぐこんなのやめ ちゃいたい。

トウマの夢を応援することも、風 俗も……。

でも、今さら別れるのも悔し い……」

「アンタ、見た目によらず頑固だ ね。

そこまで苦しめられてるって自覚 あるのに、まだトウマが好きな の?」

メイのストレートな物言いにカナ デはムカッとし、

「だって……!

私が別れたら、トウマは絶対、あ の女とくっつくに決まってるも ん!!

そんなの嫌だ!!

絶対許せない!!」

カナデはメグルのことを口にし た。

心と体は悲鳴を上げている。

カナデの頬からボロボロこぼれ落 ちる涙が、それを痛切に表してい た。
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