幸せまでの距離
リクはメイの手を引き、そばにあった ロータリーのベンチに座った。
座った瞬間、メイは抵抗を示すようにリ クから手を離す。
自分から離したのに、名残おしくなるほ どリクの手はあたたかかった。
目の前で繰り広げられるミニライブ。
路上をポツポツ占めていくギャラリーを 見つめ、リクは言った。
「人の関係って、どこでどうなるか分か らないよな」
「…………実感こもってんね」
「うん。経験談だから。
入学式でショウマと出会った時、この人 とは合わないかもって思った。
今まで関わったことないタイプだし、所々 でズバズバ物言うし。
ショウマと居るとしょっちゅう困惑する し、ヒヤヒヤさせられっぱなしだし、こ れからもきっとそうなんだろうなって予 想つく。
でも、それと同じくらい、大切な友達 だって思ってる。
ショウマに何かあったら、出来るだけ助 けてあげたい。
逆に、幸せな時も、一緒に喜んであげた い」
メイはカナデとの日々を思い出した。
トウマのアパートでお祝いをしたり料理 を作ったあの日。
カナデの幸せそうな様子を見て、メイも 胸が弾むのを感じた。
あの時はすでに、トウマの中でカナデへ の恋が冷めていたのだと分かってはいて も、あの瞬間目にしたものは記憶の中で 輝いている……。
人の心情がどうあれ、思い出は積もり続 ける。
今も、部屋で大切に保存しているポラロ イド写真。
トウマやカナデと撮った一枚の記念写真 は、メイにとって宝物だった。
「トウマさんを殴った時のメイ、なんか かっこ良かった」
「別に。余計な手出しだった」
込み上げる照れくささを冷ややかな口調 で隠しつつ、メイは心に引っかかってい たことを口にした。
「この連休中、私の父親に会いに行くん だっけ。
……本気なの?」