幸せまでの距離
メイを家に送り届けた後、リクは自宅に 戻った。
駅に着き、雑然としたホームを足早に過 ぎると、発車待ちしている車両に乗っ た。
中は案外空いていて、イスに座ることが 出来た。
電車の中は、リクのような学生より、サ ラリーマンやOLの姿が目立っていた。
時間的に、無理もない。
いろいろあったせいか、リクは、今日一 日を長く感じ、座席の背もたれに身をあ ずけ瞳を閉じる。
油断したら眠ってしまいそうだ。
仕事の緊張感から開放されたのか、ある いは酒に酔っているのか、車内には、大 きな声で話す人も時々いる。
リクの座る場所から数メートル離れたと ころで、男性と女性が会話している。
「最近多いよな、虐待」
「うん、昨日もニュースでやってたよ。
殺されたの、まだ2歳にもならない子供 なんだって。
まともに育てる気がないなら子供なんか 産むなって言いたいわよ」
「虐待とか育児放棄って、頭のおかしい 人間がすることだろ」
「そうねぇ。普通の人ならしないと思う わ」
聞き耳を立てる気はなかったが、偶然に もそんな話を聞いてしまい、リクの胸は 痛んだ。