幸せまでの距離

洗濯物が干されたベランダ。

他人の家の洗濯物に興味を持ったことの ないメイも、この時ばかりは食い入るよ うにそれを見ていた。

男性用の物だけでなく、成人女性の服も 干されている。

そういうことならまだ、メイにも予想で きていた。

翔子と離婚した当時、金山保はまだ若 かったから、再婚していてもおかしくは ない、と。


メイが驚いたのは、子供服まで仲良く干 されていたことだった。

「アイツ、子供がいるの…?」

メイの体は震えていた。

再婚しているのであれば、子供がいても 不思議ではない。

頭では分かっていても、メイにとっては 受け入れがたい事実だった。

理性や今の生活も頭から吹き飛び、心は 一瞬にして憎悪に蝕(むしば)まれる。

“翔子をまともに愛さず、私に歪んだ愛 情を押し付けてきたくせに。

あの狂った家からひとりだけ逃げ出し て、自分だけのうのうと普通の家庭を 作って幸せに暮らしてたのか……!?”

現在(いま)の幸福で何とか抑えられて いた保への憎しみが、一気に噴出する。

メイの頭は怒りで熱くなった。
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