幸せまでの距離

近くの石垣まできたリクは、そこにメイ を座らせ、彼女の背をさすった。

興奮のあまり、メイは息切れを起こして いる。

ぜいぜいと、苦しそうに呼吸していた。


「顔を見れば……。アイツに会えば、何 かが変わると思ったのに」

呼吸を整えながら、メイはつぶやく。

どうすることもできない憎しみが、心を 支配していた。

無意識のうちに、メイは期待していたの だ。

家族を持たず、ひとり寂しく暮らしてい る父親の姿を。

“昔私にしたことを後悔し、苦しみなが らひとりで生きていてくれたら、私はア イツを許せるかもしれないと思ってた”

けれど、現実は違っていた。


呼吸が落ち着くと、メイはカバンの中に 手をつっこみ、護身用に持参していたナ イフの柄(え)を強くにぎりしめた。


どうにもならない憎しみと、昔たしかに 感じていた父親への愛情。

――優しかった父。

――色々な意味で、メイを捨てた男。

真逆の感情に溺れ、メイは気がおかしく なりそうだった。

なぜ、あんなやつの子供に生まれてきた のだろう……。

なぜ、女に生まれてきたのだろう……。
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