幸せまでの距離
かつて翔子を愛していた保の気持ち。
同じ人間として、リクは共感した。
自分も、メイを独り占めしたいと思った ことがあるし、今も、気を緩めればそん な願望が胸に渦巻く。
だが、一方的な愛は愛ではないことを、 リクは知っていた。
相手が喜んで初めて成立するのが、愛情 である。
保の顔は青ざめていた。
この人は何を話すつもりなのだろう?
リクは嫌な予感を覚えながら、恐る恐 る、
「それ、どういうことですか?」
「メイは生まれるべくして生まれた。
望んで生まれた子なんだよ」
保は語った。
結婚する前の……翔子との交際期間中の ことを。
「リク君ももう大人だから、分かると思 うけど……。
翔子と抱き合うことで、僕は彼女の全て を征服し、支配したかのような錯覚をし ていた。
でも、まさにそれは思い違いというもの で、体を重ねたって、翔子の心は、常に 舞台女優の夢を追いかけていたよ。
僕に気を遣っていたのか、翔子は次第に 仕事の話をしなくなったけど、口に出さ れなくても感じていたよ、彼女の想い は……」