幸せまでの距離
遊歩道の手すりに背中からもたれ、保は うつむき、ため息をついた。
「いつか、彼女が僕の元を離れていくん じゃないか……。
漠然とした不安感に襲われて、夜も眠れ なくなった。
僕は翔子の妊娠を望み、穴の開いた避妊 具を着けて彼女を抱いていたんだ……。
翔子には舞台女優の夢を捨てる気なんて なくて、僕との付き合いも、一時の暇つ ぶしにしか思われてなかったんだろうと 思う。
一緒に居て、それが痛いほどよく分かっ たよ。
でも、翔子も女性なんだから、妊娠した ら少しは僕のことを見てくれるかもしれ ない、と、考えた。
家庭に入れば、夢を諦めてくれるだろ うってね……。
でも、そんなのは僕の理想の女性像に過 ぎなかった。
翔子は、メイを出産しても夢に未練を 持っていたし、僕との接触を避けるよう になった。
家庭内別居、というやつだよね」
「だから毎日、争う声が聞こえてきてた んですね……」
保は苦笑する。