幸せまでの距離

「俺は、恵まれていた、本当に。

ただそれだけです。

そういう立場から、言わせてもらいま す」

涙をこらえ、リクは深呼吸をした。

「困った時は肩を寄せ合い、楽しい時は みんなで喜びを分け合う。

時に干渉されるのがうっとうしいと思い ながらも、助け合いながら生きる。

『家族』って、そういうものだと思って ました。

今もそう思ってます」

「僕も、そういう家庭を築きたくて翔子 と結婚したんだよ。

失敗してしまったけどね……」

無表情でつぶやく保を無視し、リクは続 けた。

「俺は、今の自分に生まれてきて良かっ たと思ってるし、メイに出会えた人生を 幸せだと思ってます。

そういう意味では、あなた達に感謝して います。

メイがいない人生だったら、俺は今の自 分じゃなかったでしょうから。


でも、世の中には、ふたつしかないんで す。

笑って許される失敗と、絶対やってはな らない危険な失敗。


俺は、あなたの昔の恋愛感情を想像しか できないし、理解はできてません。

ただ、世間的に、身近な女性を性の対象 にする男性が多いと知って、自分が男で あることが怖くなりました。

俺にはまだそういう経験はありません が、理性を失ったら、男は危ない生き物 だと思います。

女性には、暴走した男性から逃れる武器 なんて与えられていないですから、一方 的に被害を受けてしまいます……。

男性側が自分の欲望をコントロールする こと。

悔しいことに、それしか性犯罪の解決策 はないんですよ」
< 672 / 777 >

この作品をシェア

pagetop