Diva~見失った瞬間から~

「――……。」

止まる音。

ピアノの音も、私の声も。

全てが止まった。


「………葉月…君…?」

今、置かれている状況は、

本当に突然なモノで。


「……。」


「…ど、したの…?」

私は酷く戸惑った。

無論、私の心臓も戸惑った。


「……カナ。」


「………っ…。」

近い。近いよ。

葉月君の声が私の耳に響く。


心臓が、

これまでに無いくらい動いてる。

だって、

葉月君に抱き締められてるから。


椅子に座る私を包み、

その甘美な顔が私の肩に乗っかってる。


顔と顔が近すぎる。

葉月君の吐息でさえも

聞こえてしまうほどに。


「…ありがとう。」


「……え?」

葉月君は、

私に「ありがとう。」と言う。

それは、

何に対しての「ありがとう。」なの?


「また歌ってくれて、ありがとう。」

ぎゅう…っと

少し腕の締め付けが強まる。


「……っ…。」

顔に熱が集まるのが分かる。

きっと、

今の私の顔は真っ赤なんだろう。


だって、近い。

綺麗過ぎて

奇跡みたいな顔がこんなにも近い。


顔は熱が集まるのは早いのに、

熱を逃がすのは遅い。

心臓はすぐに激しく動けるのに、

静まることはすぐに出来ない。


私の体は…おかしい?




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