Diva~見失った瞬間から~
透き通る様な、甘い歌声。
その歌声は真っ直ぐで堂々としていて。
"歌唱力"とはこう言うモノなのかと、
初めて自分の身体で感じた気がした。
『――……。』
歌声は止まり、楽器の音だけになった。
サンプルだから、
1曲しか入ってないらしい。
「………。」
俺は無言でヘッドホンを外した。
聴きたい。他の曲も。
俺は手に取ったCDを見つめた。
「……………金持ってたっけ。」
今日は財布持ってきたはず。
鞄の中に
財布が入っているのを確認すると、
俺はそのCDを手に持ったまま
レジに向かった。
「いらっしゃいませ。
お預かり致します。」
結果、気付いたら購入していた。
「何だ葉月、買ったのか?」
後ろから蒼空が聞いてきた。
「…………まぁな。」
「珍しいな。………あ、そうそう。
俺これからスーパーに
買い物行くんだけど葉月も来る?」
スーパー…?
「行かね。用無いしな。」
「そうか。じゃ、また明日な!」
蒼空は颯爽とCDショップを出ていった。
………俺も帰るか。