Diva~見失った瞬間から~

透き通る様な、甘い歌声。

その歌声は真っ直ぐで堂々としていて。


"歌唱力"とはこう言うモノなのかと、

初めて自分の身体で感じた気がした。


『――……。』

歌声は止まり、楽器の音だけになった。

サンプルだから、

1曲しか入ってないらしい。


「………。」

俺は無言でヘッドホンを外した。


聴きたい。他の曲も。

俺は手に取ったCDを見つめた。


「……………金持ってたっけ。」

今日は財布持ってきたはず。


鞄の中に

財布が入っているのを確認すると、

俺はそのCDを手に持ったまま

レジに向かった。


「いらっしゃいませ。

お預かり致します。」

結果、気付いたら購入していた。


「何だ葉月、買ったのか?」

後ろから蒼空が聞いてきた。


「…………まぁな。」


「珍しいな。………あ、そうそう。

俺これからスーパーに

買い物行くんだけど葉月も来る?」

スーパー…?


「行かね。用無いしな。」


「そうか。じゃ、また明日な!」

蒼空は颯爽とCDショップを出ていった。


………俺も帰るか。



< 422 / 500 >

この作品をシェア

pagetop