Diva~見失った瞬間から~
彼女は向こう側を向いて乗っているから
俺から彼女の顔は見えなかった。
服装は私服で、シンプルなTシャツに
ショートパンツで、ブランコの下から
見えた足は白く、細かった。
「―――…。」
「……っ…。」
彼女は横を向いた。
歌いながら。
俺はさっき、曲を聴いたときの様に
思わず息を呑んだ。
彼女の横顔はとても美しく、端正で。
歌声とぴったりの甘い表情で。
自分の心臓が疼くのが分かった。
……あの子が、"Diva"なのか?
俺は声を掛けようか、悩んだ。
もし、"Diva"なら、今大人気の歌手だ。
しかも顔を公開していない歌手。
俺が今、声を掛けて良い存在だろうか。
「カナーっ!」
1人で悶々としていた時、
後ろから違う女の子の声がした。
俺は思わず、近くの木の影に隠れた。
………我ながら、チキンだな。