ミルクの追憶
二コラは行ってしまった。
コンクールにクロエを招待することもなく、何も告げずに去って行った。
(…あのヴァイオリンのせいで、二コラは)
二コラが奪われてしまう。
わたしの元からいなくなってしまう。どんどん離れていってしまう。
どうにかしなければ、あの恐ろしいヴァイオリンは二コラの心を食いつくし、あげくの果てに死なせてしまうだろう。
(…二コラを救わなきゃ)
(…どうして、どうしてなの二コラ。
わたしよりも彼女を愛しているのね、二コラ。)