オレンジ
summer vacation〜ayano〜

「はぁ!?なにそれ、いつの間にそんなことになってん…っ!」

急に勢い良く喋ったせいだろう、陽菜は口を押さえ、ゴホゴホとむせている。

8月も半ばを過ぎて、夏休みも徐々に終盤へ近付いている。
陽菜とは夏休みに入ってからというもの、殆ど顔を合わせていなかった。
陽菜は陽菜で、彼氏とのデートに忙しいと知っていたからあえてあたしから連絡はしなかった。
たぶん陽菜はあたしの想像通りの日々を過ごしていたのだろう。
そしてあたしは、陽菜が全く想像していなかった日々を過ごしていた。

彼氏とケンカしたから愚痴を聞いてほしいと陽菜から呼び出しを食らったはずが、なぜだかあたしが尋問されている。

咳がようやく落ち着くと、水を一口飲んで陽菜はダンッ!と豪快な音を立ててグラスを置いた。
夏休み真っ最中、ちょうどお昼時のファミレスはとても混雑していて、女子高生の黄色い笑い声や赤ちゃんの泣き声に、その音はかき消される。

「で?順を追って説明してくんない?」
「え、でも陽菜の話は?なんだっけ、ケンカの原因…」
「あたしの話は、いいの」
「え?いいの?なんで?」
「なんで?じゃないよ!こっちの台詞だし!なんでもっと早く言わないの?」
「え…だって…会ってなかったし」
「連絡!してよ!!」

陽菜は少し怒っている。
と言うか、あたしはいつも陽菜を怒らせている気がする。

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