オレンジ

陽菜に連絡しようかな、と思わなかったわけではない。
陽菜はいつも、こういう話をいち早くあたしに知らせてくれるから。
だけど、なかなかタイミングが合わなかったのだ。
あたしがバイトじゃない場合、大抵陽菜はシフトに入っているはずだし、バイトじゃない時はもしかしたら彼氏と一緒かもしれないと思うとなかなか連絡ができなかった。

「…ごめん」
「いや、まぁいいんだけどさ、あたしも彩乃に連絡してなかったわけだし。でもとりあえず、わかるように説明してよね」

そう言ってチョコレートパフェをつつき始める陽菜に、あたしは今までの出来事を全て話した。
あたしは説明が下手だけど、長年の付き合いである陽菜はそんなあたしの拙い説明をうまく汲み取りながら理解してくれる。
話しながらあたしは、ストロベリーパフェと迷ったけれどパンケーキにしておいて正解だったな、と思う。
あたしの話を夢中で聞いて食べるのを忘れる陽菜の、チョコレートパフェの上に乗ったアイスクリームがどんどん溶け出していたから。

「へーえ。なるほどね。あたしが知らないうちに、そんなことになってるなんてなぁ」
「…うん。そうなの。別に隠してたとかじゃないんだけど」
「あー、それはもういいけど。で、その後も会ったりしてるわけだ?」
「うん」


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