オレンジ
sweet pain〜ayano〜
みなとみらいの観覧車。
あたしと彼が、初めてキスをした場所。
それ以来もう何度となく繰り返したはずの行為なのに、あたしの胸は毎回変わらず鼓動を速める。
最初の頃は、恐る恐るという感じで、ただ軽く触れていただけの唇。
今では触れた瞬間に、吸い付くみたいに、自然に馴染む感触がある。
それは慣れというのではなくて、お互いの想いが、気持ちが、ちゃんとぴったり重なり合い始めたことの証みたいに思える。
唇だけじゃなくて、身体ごと全部重なり合うことができたら、今よりもっと、心もまるごと重なり合ったと感じることができるのだろうか。
そんなことを思いながらも、だけどやっぱり怖くて、あたしは意識してこういう展開を避けてきた。
彼が、それを求めている空気をうすうす感じる瞬間は多々あったけれど、あたしは気づかないふりをしてきた。
それなのに、不思議。
今まさにそんな状況に置かれているあたしが感じているのは、恐怖よりも、興味。
もちろん今も怖い。
けれど、知りたい。
この先のあたしたちの、新しい関係。
高校生の頃、周りはほとんど経験済みで、あたしも彼氏がいたから当然そうだと思われていた。
だから、この歳で未経験だなんて言ったら、彼も引いてしまうのかな、という不安もあって、言えずにいた。