オレンジ

「…拓真」
「…………」
「それならあたし、やり直して欲しいなんて、もう言わない。けど…」
「…………」
「友達としてでいいから、そばにいてよ…」

彩乃の顔が、頭の中に浮かんだ。

俺は、心に決めていた。
もし、次に彼女ができたとしたら、どんな時も支えになれる男でいようと。
それはもちろん、ミナミとのことがあったから。

彩乃を、傷つけるわけにはいかない。
あんなに、始めは俺を疑い続けていた彩乃も、今ではすっかり信用してくれている。

ふっと浮かんだ彩乃の顔が、俺に冷静さを取り戻させた。


「…まず、旦那とちゃんと話しろよ。俺なんかに泣きついてないでさ」
「…………」
「話、聞くくらいならしてやるから」

今ここで、連絡をするなと言っていても埒があかない。
堂々巡りで話がつかないに違いないから、妥協案として、俺は言った。

今夜も、彩乃が来ることになっている。


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