オレンジ
疑惑〜ayano〜

街には秋の気配が色濃く漂い始めた。
あたしが、1年で1番嫌いな季節。
わけもなく、心細くなるこの感じは、何度経験しても慣れない。

でも、今年の秋は、拓真がいる。

付き合い始めて、最初の夏が過ぎて、今も当たり前に隣にいてくれる。
それだけで、あたしの心は、秋独特の物悲しさや寂しさに支配されることはない。

最初のうちは、絶対に無理だと拒んでいたけれど、彼が望むので「拓真」と呼べるように努力した。
最近ようやくそれが自然になってきたところだ。

連れ添って出かけた江ノ島、横浜、お台場、スカイツリーにディズニーランド。
想い出は日々、積み重ねられていく。

少しずつちゃんと、それなりの「恋人同士」のかたちが出来上がってきたように思う。

もう少し寒くなったら、紅葉でも見に、車で連れて行ってもらおう。
そして冬には、拓真が毎年行くというスノボに、一緒に行く予定。
あたしは、やったことがないけれど、教えてくれると言ってくれた。

クリスマスにお正月、それが過ぎたらバレンタイン。
1人でいるとさほど意識することもない季節の移ろいも、年中行事も。
一緒に過ごすであろう相手がいるだけで、こんなにも待ち遠しく、楽しい。

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