オレンジ

俺の元を離れ、他の男と結婚し、子供を産んだミナミ。
ミナミのことは大好きだったし、将来のことだって考えて付き合っているつもりだった。
だから、ミナミが出て行った時には相当なショックを受けたし、しばらくは立ち直れなかったのも事実だ。

だけど、今は違う。

ミナミが、旦那の浮気を理由に離婚を考えていることも、別居に至ったことも、そしていずれ離婚が成立することになったとしても、それはもう俺には関係のないことだ。

もう俺には、彩乃という彼女がいて、彩乃を大事にしたい。
俺は本気でそう思っている。

…そのはずなのに。

「ねぇ拓真、じゃあどうしたらいい?ショコラ、迎えに来てくれる?」

俺に甘えているようなその声色は、付き合っていたときのそれと同じだった。
腹立たしさと憎らしさが湧き上がってくる中、かすかに懐かしさも感じたことを、吸い終わった煙草と一緒に揉み消す。

「わかった。今から家に帰るから、そしたら車で行く」
「うん、ありがとう。お願いね」

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