オレンジ
「わかってる。自分でも、何やってんだ
ろ、って思ってる。でもね、あたしの…
直感、っていうのかな?あの人のことは全然よくわからないのに、でも…悪い人
じゃないって気がして…だから」
だから、なんだろう。
自分でも、実はあまりよくはわかっていない。
でも、ただ、なんとなく
もう一度、話してみたいと思っている。
あの彼と。
自分でさえ掴みきれていない感情を、陽菜に話して理解してもらおうなんて、そもそも無理があると思う。
「ね、陽菜…だからさ。うまくは言えないんだけど、とりあえず急いで解約はしなくていいかなって思ってるのね。だから…」
「だから今日は一緒に行ってくんなくて大丈夫だよ、って?あたし解約に付き
合うつもりでここに来たんだけど?」
「うん、まぁ…」
語尾を濁したあたしを見て、あからさまなため息をつく陽菜。
あたしが昨日の一件で話したいからと呼び出して、大学の駅前を歩きながら早速話してみたらこの有様だ。
「わかった。とりあえずね」
「うん。ありがと」
「ボケボケしてるかと思いきや、言い出
したら聞かないもんね、あんたは」
「ひどー!」
食い下がるあたしを遮り、陽菜は言った。
「そのかわり」
「あたしも、会わせてよ」