オレンジ

あたしが黙りこくっているのを見かねて、彼は言った。

「まぁ、そりゃ今すぐ信用しろってほうが無理か。でも、デートはしてくれんだよね?」
「…はい」
「いいよ、ゆっくりで。ゆっくり、俺のこと知ってくれたら。俺もまだ、君のこと、知らないからさ。お互いね」


あ、やっぱり…



さっきから、
ううん、ほんとはたぶん
昨日からずっと、思っていた。



彼のことはまだなにもわからないけれど、この笑顔は、嫌いじゃない。



「…はい」

あたしが、彼とのデートを、OKした理由。
それはきっと、この笑顔が、また見たいからなのかもしれない。


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