オレンジ

「…わかった」
「会ってくれるの?」
「…明日、行く」


また、いつもと同じだった。
こう言わない限り、電話は終わらない。
でも、今日の俺には、覚悟がある。

「よかった、嬉しい」

途端に泣き止む彼女。
これもいつもと一緒。
いつもならこれで、時間を伝えたら電話は終わりだ。
けれど、俺は続けた。

「俺もちょうど、お前に話したいことがあるんだ」
「…なに?」

いつもと同じ流れを待っていたであろう彼女の声が硬くなる。

「…明日話すよ」


好きな子ができたことを、きちんと話そう。
もうとっくに別れているわけで、報告の義務なんて全くないけど、ちゃんと言おう。

俺にきまった相手がいないからこそ、そこに希望を見出して、こうまで執着してきているのだろうから。
もう、彼女に与えられるものは俺にはないことを、きちんと話してわかってもらおう。


いつまでも元カノとのゴタゴタを引きずり続けるわけにはいかない。
彩乃ちゃんとの今後のためにも。




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